鈴の付いた靴


リーンーーー

といつもの車両には無い音にふと目線をおくった先に、一組の親子が立っていた。

子どもは年長さんか小1だろう。

その手を握るのは、40歳くらいのすっきりした容姿のお母さん。もう片方の手には盲人用の杖が握られていた。




すこし見ているだけで親子の情の深さが感じ取れる。

ゲームやお菓子などなくとも、娘さんは外の景色を見てお母さんに何事かを話しかける。お母さんはゆったりとそれに応える。

席を譲ろうと思ったが、多分この親子は車両の中ほどの席に1人だけ座るよりも、ドアの横で寄り合っている方が望ましいのだろうと、その判断は勝手だが間違いないような気がして、見守ることにした。




娘さんが動く度に、リーンーーーと柔らかいが確かな音がする。

そうか、子供と手が離れてしまったときに、お母さんが子供を見失わないようにしているんだと、ようやく気が付いた。



それから繋いだ手を見ると、手と手を握り合っているのではなく、お母さんが娘さんの手首をちゃんと握っている。ずーっと片時も離さず握っている。

娘さんは慣れているのだろう。じっとしていられない年頃だと思うのに、手を握られていることを嫌とは思わないようだ。きっとそれは二人の外出の際の決まりごとになっているんだ。



そう思うと、ジロジロ見るのは申し訳ないなと遠慮はしたが、やはりどうしても目が行ってしまう。その握られた手に、2人の雰囲気に、心の奥底のほうで安らぎを感じてしまう。

お母さんはこの手を優しく包んで離さない。もしふと離れてしまったら、リーン―ーーと音のなる方向に、まっすぐに走り出すんだろう。例え前が見えなくても。周りに車や電車がビュンビュン走っていようとも。



お母さんは娘さんが無条件に大事で、娘さんはお母さんが無条件にお母さん。

無条件の愛より美しいものなど何もない。









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三宅弘晃



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by wagoichi | 2018-07-21 12:32 | 日常