照千一隅への道のり

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嗜好品とは何か


私は酒をこよなく愛す。

ギャンブルはやらない。煙草もやらない。その上酒も吞まないようでは何の面白味もない人間ではないか!との大義面分を振りかざし、酒だけは好きなように吞んでいる。放っておくと一年に364日くらいは酒を呑む人間である。

酒は日本酒がいい。「酒は純米。燗ならなお良し。」とは故 上原浩さんの名言だが、やはり日本酒が良い。特別上等な酒でなくて良い。いや特別上等でない方がむしろよい。真っ当に造られた酒を、気の置けない仲間と気安く呑むのが最高に幸せだと思う。

私は酒と一緒に肴も楽しみたい派である。新鮮な野菜に愛情を添加して料理された肴があれば素敵だ。いや料理抜きで、新鮮野菜と味噌のスティックサラダでも充分だ。贅沢をしたいときはそこに季節のお造りを添える。寒い時には湯豆腐などの炊き物もまた嬉しい。山に入ったらやっぱり塩をまぶして焼いた川魚が最高のご馳走になる。

日本酒がいいのは、味もさることながら、季節折々を楽しむことができるところにあろう。今の季節は新酒が楽しい。新酒はぴちぴちとして元気が体に入ってくる感じがする。その中でも特ににごり酒やどぶろくに近頃はまっている。お米の旨みと微生物の元気がはちきれんばかりで、呑むと「ウオー」っと叫びたくなる衝動が突き上がる。それを抑えるのが大変な次第である。

この時期から酒粕もでてくる。酒粕は字の通り、酒を絞った残りカスであるが、むしろ酒の栄養はこちらの方にぎっしりと詰まっているので捨てるに惜しい。この酒粕と味噌を混ぜ出汁に溶き、大根や白菜などの冬野菜、またサバやアンコウやタラなどの旬魚を煮込む。そう粕汁である。あるいはおでんの出汁に酒粕を入れてもいい。粕汁と玄米と日本酒で冬が完結する。



そんな酒を数日抜いてみた。

年中無休のはずの飲酒生活を、私は時折中断する。いや中断するというのは格好つけているだけで実は中断させられる。体調不良というやむを得ない事情によって。

毎日呑み続けていると、といっても大した量ではなく一日に四合瓶一本程度のものであるが、それでも毎日毎日呑んでいるとやはり体はおかしくなってくる。呑もうと思えば呑めないことはないが、そこで無理をすると後々痛い目に合うのは幾度も経験済みなので、おかしいと思ったらしばらくスパッとやめる。

「ああ、またか。」

と、黙って酒を抜く。数日の禁酒で済むこともあれば一月ほど続くときもある。いつまで続けなくてはならないかは体が教えてくれる。朝起きて空に飛べそうな気がすると酒のペナルティーは支払い終えたことになって、また酒呑み道楽の日々が始まる。禁酒明けの酒はまた格別に美味しい。考えようによっては禁酒は最高の酒の肴とも言えよう。




この数日の禁酒の間、考えたことがある。「嗜好品とはなんであろうか。」と。

実はもう数年前からなんとなく「嗜好品」について考え続けている。酒に煙草に砂糖に珈琲にあとは・・・?まあいい、酒とたばこと砂糖と珈琲だけでいいだろう。我々は嗜好品というものをどう受け止めたらいいのだろうか。

嗜好品が体にいいとはあまり聞かない。「酒は百薬の長」という人もいるが、あれはちびちび養命酒を呑むような人のことを言うのであって、ぐびぐび呑む酒が薬になるはずがない。砂糖はどうか。砂糖は体のエネルギーになるが、別にお菓子やアイスを食べなくても炭水化物を摂っていればちゃんと体内で砂糖に変えてくれるんだから、わざわざ砂糖を取らなくてもよい。むしろ砂糖は害である。

煙草はちょっと分が悪い。「煙草は健康にいい!」との理屈は苦しいから「疲れたときに一服すると心が落ち着くんだ」で周囲の理解を求めるか、いっそ「肺がんで死のうが俺の勝手」と開き直るか。

コーヒーはどうか。砂糖や煙草ほど珈琲が体に悪いとは思えない。沢山飲みすぎなければ、クリープや砂糖を入れなければ、そして胃が弱くなければ、そんなに心配しなくていい嗜好品の優等生かもしれない。

まあそんな風に一つ一つの品目についてどうのこうのと言うのが今日の趣旨ではなく、もっと大きく漠然と「嗜好品」というものをお盆の上にのせて、まじまじと眺めながらその存在意義について考えてみたいというのが、今回の禁酒中のテーマであった。



嗜好品とは何か。これを考えることは、人間の本質を考えることではないか、そんな風に思う。

嗜好品は基本的に体に悪い。わざわざ金を払って体に悪いことをする。体に悪いとわかっていながら、健康意識が高い人でも、嗜好品となると理屈が度外視される。ダイエットのためにスポーツで汗を流した後のビールやアイスは美味いらしい。無農薬野菜にこだわりながらお菓子をやめられない人も多い。嗜好品には我々の心を捉えようとする独特の吸引力がある。

人は理屈で生きている。生きたがる。理路整然とした人生哲学を持ち、合理的に生きることに憧れる本能が誰しもある。しかしだからこそ、その反面に良くない事、良心に反する事、ダークサイドな事に惹かれる気持ちが湧いてくる。「あえて」「わざわざ」悪いことをしたくなる本能が誰しもどこかに必ずある。反発したい。それが気持ちいい!と感じてしまう自分がいる。

こういう「ダークサイドの魅力」を否定する事には何の意味がないし、事の本質を見えなくする。人間にとって「ダークサイドの魅力」もまた決して消し去ることのできない本能の一部であろうから、それを否定しようと努力をしたり、それを苦に感じるのは全く無駄であって、それはあるものとしてそのまま受け入れるしかない。

むしろ「正しく合理的に生きるべし」なんて虚妄に縛られる風潮があるから、ダークサイドとしての嗜好品が存在意義を得ているのかもしれない、そんな風にも思う。人間はそんなに徹頭徹尾全てが綺麗なものではない。賢くもない。賢いところもあるが、馬鹿なところも確かにある。それなのに、理路整然としたものを求めすぎたときに、ダークサイドからバランサーとしての嗜好品が送り込まれてくるのかもしれない。

嗜好品は純粋に気持ちいいのである。酒に酔うのは気持ちがいい。煙草を吸う人も心底気持ちよさそうな顔をしている。プリンを食べる人の顔はほころぶし、極上の珈琲を口に含む瞬間のかぐわしさと言ったらもう堪らない。これはどういいうことかと言えば、綺麗も醜いも混濁した人間に対し、「こうあらなくてはならない。」という決めつけをあまり押し付けてしまうと、なんとなくハラが息苦しくなって、ダークサイドからのかぐわしい嗜好品に酔いたくなるのだろう。

禁酒中にそんなことを考えた。


健康にいいものだけを口にしよう、などというバカな考えはどうぞ捨て去るべきでしょう。体に良いものだけを食べようなんて人が仕事柄私の所には沢山来るが、それはおかしい考えではないかといつも言っている。ハラ揉みを生業とする人間がこんなことを言ってもいいかはわからないが、「私は賢明だから栄養バランスは行き届いている立派な生活をしています」なんて考える人間は誠につまらない人間であると思う。そういう人間ほど、実は人よりも大きなダークサイドを隠しもっているものであることを私は知っている。だてに何千人ものハラを揉んできたわけではないのだから。

人間のハラは美しくも醜い。醜さもまた自然でありそれがまた美しい。理路整然と生きていく瞬間もある。しかしそうでない瞬間も必ずある。理路整然といかないからと言って自分を卑下する必要は全くなく、そういうものとして自分と向き合えばいいのである。もちろん理路整然と出来た時はその清らかな香りを楽しめばいい。でもいつもいつもそうはいかないことを知っておくのもまた大事である。

酒に「百薬の長」などと正当な理由をつけるのは持ってのほかである。酒はダークサイドからの贈り物であって、自分をわきまえた本当の大人はダークサイドの味わいを正々堂々と楽しめば良い。生きている喜びを、美しさと醜さと強さと弱さとが混濁した命の生々しさを楽しめば良い。そこでほっと一息の鋭気を養い、いまだ届かぬ清らかな世界に向かって不器用に翔びたてば良い。その繰り返しが人生というものではなかろうか。


今日も旨い酒を呑もう。










三宅弘晃

emoticon-0179-headbang.gif今日の丹練
・伸脚四股300丹


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by wagoichi | 2017-02-13 21:52 | 戯言



ようやく癌解説2つ目完了。3つ目が・・・3つ目が大変なんだよ。テーマは決まっているが、どう伝えたらいいのか。。。。ああぁぁ
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