揉道16.日本の相撲文化


今自分が節目にいる実感がある。この節目の時期にお会いしておきたい人がいて、わごいちにご招待した。

島田親方こと、ちゃんこ料理店オーナー島田久元さんである。




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島田親方は徳之島を出て高砂部屋に入門。朝潮親方の元で「奄美富士」という四股名で土俵で戦い、引退後はちゃんこ料理屋を開業された。店はもう30年にもなる老舗の大人気店である。

15年ほど前、奥さんが何かの雑誌記事でわごいちを見つけられ、ご縁が生まれた。整体師と通院者と言う関係を越え、これまで島田親方には書き尽くせないほどお世話になってきた。

全盛期の朝青龍にも引き合わせていただいた。握手した時のピチピチ・ムチムチ・ビュンビュンな彼の筋肉の感触は今もこの手に残る。あんな筋肉には滅多には出会えない。

朝青龍の居た高砂部屋の稽古にも、また島田親方が恩師と慕う中村親方の稽古にも何度も連れて行っていただいた。春場所(大阪場所)には上新庄の春日神社へ中村部屋の朝稽古へお邪魔するのが定番になった。

何年も通っていると、1年ごとに力士たちの体が変化していくのがよくわかる。朝稽古の後は、中村部屋特製のちゃんこをつつきながら中村親方から様々なお話を聞かせていただいた。相撲界は上下が厳しいので、ちゃんこも親方と来客だけが始めに食し、番付順に食していく。その間、若手力士がちゃんこ番として給仕する。猛稽古の後の汗と砂にまみれた力士たちに給仕してもらうちゃんこは格別だった。

中村親方の四股名は富士櫻。相撲好きなら知っている名前だと思うが、小さな体で真っ直ぐに相手にぶつかっていく姿が相撲ファンに愛され、「突貫小僧」と呼ばれた。

現役時代の中村親方は食が細かったので、どうやったら体を大きくできるんだろうと散々工夫と研究を重ねられたそうで、食事の話をよく聞かせて下さった。

人間の体はどうやれば太れるか。そのメカニズムが解れば太ることも、逆に痩せることも自由自在にできるようになる。わごいちの栄養指導は、実はこの中村親方を始めとする力士たちの経験に大きなヒントを得ている。1キロ増えるか減るかが勝ち負けにつながる。そんな厳しい世界に生きる彼らの知恵はまさに人生をかけたもので、そんじょそこらの栄養理論の及ぶものではない。


中村部屋の稽古がまた凄くて、面白くて、盛んに勉強させてもらった。四股と鉄砲。細かい解説などは誰もしてくれない。と言うより、力士たちも理論云々ではなく、「そういうもの」として日々当たり前のようにやっている。だから正確なメカニズムなど誰も知らないし、知る必要もない。

私は中村部屋と高砂部屋の稽古に通いながら、じっと見つめてそのメカニズムを一つ一つ分析していった。もちろん初めは殆ど意味が解らなかったが、何年も研究を重ねるうちに段々と意味が一つ一つ見えてくるようになった。「これは凄いものだ」と改めて国技である相撲、その奥にある日本の身体文化の奥深さに魅了されるようになっていった。

これが今回、島田親方にお礼を言いたかったことの一つ目である。


私は「足圧」という整体法を「丹足」へと進化させたが、丹足の「丹田で踏む」という感覚を実際の動きに昇華することができたのは、この相撲に触れ続けた事が大きな意味を持っている。もともとは大地を踏みしめる神事として発祥したとされる相撲、それはまた丹足にも繋がるものだったのだ。

私は島田親方の導きを得て、その繋がりを見出すことができた。そして丹足が生まれた。




もうひとつ僕が島田親方から得た学びは「徒弟制度」だった。

親方夫妻がわごいちに通いはじめられた頃、わごいちの施術スタッフは皆パートさんだった。週に2回か3回か、パートとしてわごいちで丹足(当時は足圧と言った)をしていた。

親方夫妻はちゃんこ料理店で10人くらいのパート・アルバイトさんの他に2人の社員が居た。社員と言っても普通の会社員とは違って相撲部屋らしい家族付き合いをされていた。親方は二人の社員の将来を自分の子供の様に考えておられたし、その分厳しくも温かみもある関係を作られていた。

整体も、いや整体こそ技術をしっかりと伝えるには、世間一般の雇用関係では難しいなと思っていた私にとって、そんな相撲部屋の親方と相撲部屋スタイルの繋がりに興味が湧いた。雇用関係とは極論すれば損得の関係である。技術伝承に損得関係を持ち込むとひずみが出る。そこが悩みだった。


島田親方ご夫妻に出会い、親方目線、女将さん目線、それぞれの目線での社員さん達との関わり合いは、まさに生きた教本となって私なりの徒弟制度づくりの後押しをしてくださった。

10年前に池田参尽を、5年前に井上紙鳶を弟子にとり、今では珍しい徒弟制度を取る整体としてわごいちがあるのは、このご縁抜きには語れない。

これがもう一つ、15年経った今、私が島田親方にお礼を伝えたかったこと。




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右奥が島田親方。
左奥が、元社員の大ちゃん。


この日は私が親方を整体し、その後、弟子二人が心を込めて作った料理でおもてなしをした。

これまで沢山のものを頂いてきて何もお返しが出来ていなかったが、節目のこの時にこういう時間を持てて、気持ちを伝えられてまた一つの気持ちの区切りがついた気がした。

45歳になって、何事もバトンだと思うようになった。先輩から頂いたものは後輩に渡す。頂いた恩は後世に託す。



さあこれからだ。







三宅弘晃

080.gif今日の丹練
・四股300丹


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by wagoichi | 2017-08-03 15:29 | 日常