照千一隅への道のり

人間の性



ようやく。。。と言うべきか。 『翔ぶが如く』全10巻を読み終えた。

男達が不器用で頑固で愚かで、でも懸命で誠実で潔くて、読んでいて切なくて何度も途中で挫折した。もともと読むのは早い方ではないが、この本は読み始めてから2、3年くらいも経ったろうか。



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それでも 『竜馬がゆく』 『最後の将軍』 『翔ぶが如く』 『坂の上の雲』という幕末か日露戦争までの道のりを一通り読み、ようやく感じとれたことがある。

どうして日本人はあんな酷い戦争をしてしまったのか、ということについて。



辛い過去に目を伏せる人もいれば、過ちを繰り返さないようにと直視する人もいる。司馬先生は歴然とした後者として、後世のわれわれが同じ過ちを繰り返さないようにとの願いを歴史小説の中に残されたと思う。

戦争に正しいも過ちもない。戦争が起これば大なり小なり文化は破壊され弱きは凌辱される。暴行や虐殺が全く伴わない戦争など古今東西どこにもない。誰でも戦争の中では精神のバランスを崩し、平常では考えられない行動をする。それは人間という生き物には共通の性として刻まれている。

ハラを触ると、人間の性の生々しさに呆れ果て、途方に暮れることがある。人は理屈だけで生きているのではない。感情だけで動いているのではない。それらの根底にハラがある。理性や感情の源であり、帰結であり、支配者であるハラから逃れて生きることは出来ないと痛感する。



「私は理性がしっかりしている」と口にする人間ほど危うい。そうことを口にする最中のハラは完全に沈黙している。まるで「やれやれ、こいつに何を言っても無駄だな。」とハラが言っているようである。そんなハラの気持ちなぞ全く省みない人間に触れていると、だんだんハラが可哀そうになってきて、代わりに言ってしまうこともある。「あなたの頭はそんなに立派なもんじゃないよ」と。

まあびっくりする。なんてこと言うんだとムッとする人もいる。でも理屈だけで自分を律することができるなら誰も苦労しない。「明日からダイエットするぞ!」という決意が挫折するはずがない。「旦那さんに毎日素敵な笑顔をするぞ!」という誓いが破れるはすがないじゃないか。

人は理屈だけでは制御できない。理屈は、環境の変化や自己都合が生み出す新しい理屈に、いとも簡単に更新される。「笑顔の絶えない幸せな家庭を築くって決めたのに、旦那さんに笑顔を返してもらえない自分が可哀そうになってやめた。」

性を省みないで理屈をこねくり回しても、結局こういうことになってくる。




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じわじわと戦争の足音が近づいている気配がある。

戦争を起こすのはヒトラーではない。東条英機でもない。

「自分は間違わない」「自分はちゃんとしている」「周りがおかしい」と考える人が増えて大衆を形成した時に、ヒトラーや東条英機のようなリーダーが台頭してくる。そんな風情はもう今の世間に満ち始めてはいないか。

司馬先生は歴史小説という形で、我々の性には、誰しも愚かな未来を招き寄せる要素があるという警告を残されたようにも感じる。



私はハラを揉む。ハラを感じ、ハラを語ることで、人間の性を伝えていこうとしている。

私が真に怖れるのは怠慢が引き起こす病ではない。狂気が引き起こす戦争である。そのどちらにも傲慢というハラへの無関心が見て取れる。





人のハラも思うほど綺麗じゃない。正しさだけを持っているわけではない。

それが良いとか悪いとかではなく、それがハラというものである。美しさも醜さも内包しているのがハラである。そういうハラの性を直視する。そこに生の喜びを感じとりながら、その上でどう感じるか。どう考えるか。どう行動するか。ハラをイキイキとさせて生きるにはどうしたらいいのか。ありのままの自分と共に、そんな自分を律していくにはどうしたらいいのか。どう生きればいいのか。

それを考え続け、伝え続けるのが、ハラ揉みをする人間の本懐ではないかと思う昨今である。





ああ。

また司馬遼太郎記念館へ「21世紀に生きる君たちへ」に触れに行きたくなった。










三宅弘晃

080.gif今日の丹練
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by wagoichi | 2017-01-29 05:18 | 人生
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「原点が導くこれから」という感じでしばらく探り書きです。

by 三宅弘晃
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