なぜ職人は低収入なのか

はた!と気が付いたのである。

はた!と膝を打ったのである。

なぜ職人は収入が高くないのに、平然と職人を続けていられるのか、その答えに思いが至ったからである。



職業間で凡その収入格差がある。

年収1千万円を超えるような職業と言えば、金融やマスコミや製薬や弁護士や医師などが挙がる。


昔、人に問われたことがある。「なぜ弁護士や医師は、高収入かわかるか?」と。

「わからない」と応えると、その人はこう言った。

「弁護士も医師も、普通は見なくていい人間の汚いところを見なくてはならんだろう。汚いこと相手の仕事してもらうわけだろう。だから敬意を表して先生と呼び、収入を高くしているんだよ。」

本当か嘘かは知らないが、妙に納得したことを覚えている。確かにそういう側面はありそうだし、そういうものならば「どうぞどうぞ高収入でいてください。」と納得もいく。

ちなみに多くの整体師は医師の高収入をうらやんでいるが、(実際には最近は苦しい医師も増えているそうだが、)整体師は医師ほどの汚れ仕事をしていないんだから、この論理でいけば、うらやむのは筋違いということになる。



同じ視点で見れば、他の高収入の業種も納得がいく。

例えば金融業。

金融業の本来の役割は、公共の資産であるお金が必要とされるところに滞りなく周るよう奔走し、経済の発展に寄与するものであろう。多くの金融マンはそういう目的意識でこの業界に入る。

ところが入ってみると、そういう綺麗ごとばかりではなかったりする。経営に苦しむ会社を見捨てて破産していく姿を見なければならない時もあるだろう。さらに債権回収で追い打ちをかけねばならないこともあるかもしれない。結果として社長が自殺するかもしれない。

自分個人としては嫌だと思っても、社命とあれば抗うことは難しい。


例えば製薬業。

薬は何のためにあるか。それは病人の苦しみを和らげるためにある。そう望んで製薬会社に入る。しかし入ると様子が変わる。わが社の薬より、ライバル社の薬の方が断然効き目があると知っている。でも「いやー実はライバル社の方が個人的にはお薦めなんですけどね。」なんて言おうものなら大変なことになる。

激しい副作用があり、効果はほとんどない、そんな抗癌剤の営業担当になってしまったら大変だ。副作用にうんうん苦しむ病人を横目に、医師にこの抗癌剤を売り付けなくてはならない。まわりまわって自分の親がその抗癌剤を使うことになってしまうとしても。。。。


どちらの例でも大変なストレスであろうと思う。「いつまでこんな仕事を続けるのか。」「俺はなんの為に働くのか。」そんなことを自問する日々ではないだろうかと想像したりする。

これも誰にでもできる仕事ではない。




一方、我々職人はどうだろうか。

うん、あまり高収入そうな人は居ないな(笑)。大抵皆、嬉々として、ちまちまと自分の仕事をしている。

例えば整体師やアロマセラピストにとっては「独立開業」というのが一つの夢の形なのだが、知っている限り独立開業者で年収1千万はおろか、年収500万を越える人もごく一部である。多くは生活に困窮している。(整体職人とは名ばかりの、マッサージチェーン社長は別である。)

親しくお付き合いをしている畳職人、音響職人、住環境デザイン職人、コーヒー焙煎職人、それぞれ社長をしているが、うーんあまり金持ちには見えない。(お前が言うなと言われそうだが。)

私が尊敬してやまない宮大工、故 西岡常一棟梁さんの自宅を訪問した人が、家のあまりの古さと傷み具合にびっくりした、と書いておられた。西岡常一といえば、法隆寺を修築し、薬師寺を再建して日本中にその名をとどろかせた伝説の宮大工である。が、その当人の家は質素の極みであったいう事実。 

だいたいの職人の生活はそんなもんである。これから職人を目指す人は、経済面ではあまり大きな期待をしない方が無難である。

が、それでも我らは、収入の高低に一喜一憂することは少ないのも事実である。生活の心配は一応しているが、さりとて収入にさほど囚われていない。


それはなぜかと考えて、はた!と手を打った。




もし仮に、全ての製薬会社が一斉に社員の年収を300万にしたらどうなるか。おそらく大多数の社員はその業界を去ることになるだろう。残るのは、ごく一部の高潔なる志の持ち主だけになるはずだ。

だから製薬会社の給料は高いのである。高くしておかないと社員を繋ぎとめておくことが難しいのだろう。

そう思い至った。



我々職人は、例え貧乏していても、食っていければ職人であり続けようとする。300万なら300万で暮すのみである。ただ問うのは、「自分の仕事を純粋に愛しているか」というその1点に尽きる。「これは自分の天職である」と思えたならば、それは何よりもの喜びなのである。

例えペンキまみれであろうとも、汗だくでヘトヘトに疲れようとも、納得と喜びのなかで仕事をさせてもらえているのが職人の世界なのだろう。



どの職業がいいとか悪いとか、そういうことを言うのではない。どの職業も必要な、誰かがやらねばならない仕事である。


ただ、


収入が大事と思うなら職人にはならないほうがいい。

「心から純粋に仕事をしたい」と思うなら、職人をするのがいい。


ということを言いたかっただけである。












弘晃

055.gif: wagoichi◆excite.co.jp (◆を@に)
HP: わごいち(←クリック)

066.gif今日の丹錬
・よさこいスクワット100回
・木刀200回
・四股200回


[PR]
by wagoichi | 2016-11-13 15:56 | 職人